―序―

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   再び鳴る受信完了の効果音。携帯のディスプレイには万莉愛(マリア)を登録しますか?[はい][いいえ]という表示がされている。当然そのために赤外線通信をしたのだから誠也は[はい]を押す。 「本当にごめん。じゃあ学校が終わったら連絡して」 「私の方こそすいません。じゃあ学校終わったら連絡しますね」  丁度その時、駅のアナウンスが流れた。今来る電車に誠也は乗る事になる。電車が来ると万莉愛はペコリと軽く頭を下げ電車の扉の方に向かっていった。それを見て誠也も続いて 「さてと、よいっしょ!」  大量の荷物の持ち、万莉愛の並ぶ車両とは別の車両の扉へ向かって行く。時刻はすでに八時十二分を回っていて遅刻確定が決定なのだ、自分の不運さに疑問を抱きながら、寮に着いたら荷物を置いて適当に何かで時間を潰そう、所であのストラップは幾らなんだろ。電車が止まるまでの間だ誠也はそんな事を考えた。  扉が開き中に入ると車内の隅で吊革に手を掛けた誠也。座りたくても荷物が多すぎて座れないないのだ。降りる駅までしばらくあるし気分転換も考えて携帯のミュージックを聴こうとイヤホンを耳に着け、お気に入りの曲を流そうと携帯電話を操作する。曲を聴くも時間は朝方、瞬く間に車内は人混みで溢れた。  夏休みが終わったとて、まだ暑さはいたって健在だ。車内の中は人混みのせいで蒸し暑く感じ、誠也の真正面に立つ太ったサラリーマンは流れて来る汗をハンカチで何度も拭いている。電車が大きくカーブをすると揺れた拍子にそのサラリーマンの身体が誠也に当たる、後ろに下がりたくとも荷物の多さで下がれず誠也は苦しさを耐えるしかなかった。
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