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駅が二つ三つと過ぎて行くと微かにだが人混みが薄れていった。大きな駅に止まるとようやく人混みは無くなり、サラリーマンの誠也に対する攻撃に終止符をうった瞬間である。
「はぁ……ん!?」
ふと目がいった先に中学生と小学生の姉妹らしき二人が並んで席に座っていた。誠也が思わず目線を送ってしまったのはその小学生に注目したためである。小さな身体にもかかわらず、"えっへん"とした様に腕組みをしショートヘアーの姉にボソボソと何かを言っている。誠也はそれが少し気になり曲のボリュームを下げた。
「遅刻はお姉ちゃんのせいですからね! 本当、ショックの大きい絶望感です」
「ちょっと何、だいたい起こしても起きない、あんたがイケないんでしょ!」
「あんなのは起こしたとは言わないんです。起こすんならちゃんと起こしてもらわないと困りますです。 本当、ショックの大きい絶望感です!」
二人の口論は車内中に響き渡るが二人の様子は全くそんな事を気にする素振りすらない。
「あーもう頭にきた。前々から言っているけどあんたのしゃべり方どうにか成らないわけ!?」
「不可能です。だって私が直そうなんてこれぽっちも思ってないんです。 本当、朝からずっと悲壮感です」
「それよそれ! 何とか感、何とか感って何なの、それは喋るたんびに必要なのかつうっの!」
「必要ですね。 本当、――」
ここで乗客の一人が明らかさまの咳払いをした。姉妹の二人も回りの目線に気付き自分達が煩かったとわかったのだろう。二人揃って
「すいません……」
「ごめんなさいです……」
と言って赤面した様子で小さく成った。
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