―序―

11/20
前へ
/29ページ
次へ
   コンコンと扉をノックする音が1DKの部屋に響き渡る。ノックの主はどうやら短気らしく、コンコン、トントン、ドンドンと力強いノックに直ぐに変わった。 「はいはい。今行きますよー」  重い身体を持ち上げてノロノロと玄関に向かう誠也。迷惑極まり無いこのノック、絶対にアイツだと誠也は既に検討が着いていた。  ガチャリと扉を開けると力強く扉を引っ張られ案の定、誠也の思っていた人物がそこには立っていた。 「やぁ」 「やぁ。じゃないでしょ! 一時間目の授業に出てないでしょ。あんたクラスの委員長である私に喧嘩を売ってるんでしょ」 「待ってくれ琴美(コトミ)あれだ、人助けをしたって言うか、騙されたって言うかなんつうかで……」 「問答無用。 だいたいね遅刻したなら直ぐに教室に向かう。それは普通でしょ」  ボブカット、それよりも少し短い髪型で眼鏡をかける八端 琴美。彼女の登場により教室に向かう事になるのだが、彼女の登場により一時間目を暇無く欠席する事になる。 「ちょっと待ってくれ、俺は今来てばっかで少ししたら行こうと思ってたんだ、信じてくれ」 「知らない訳無いでしょ」 「えっ?」 「だから! あんたが今来てばっかなのは知ってるって言ってるんでしょ。あんたが呑気な顔で門から入って寮に向かって行く所の一部始終を教室から目撃したから、此処に来たに決まってるでしょ」 「はぁー」  
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加