―序―

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   誠也と琴美、二人は寮を出て校舎へと続く中庭を歩いていた。流石に私立の高校だけはある。中央に池が存在し、あちらこちらに綺麗な花を咲かした花達の花壇があり紅茶は此処でと言わんばかりの洒落たテーブルと椅子まである。誠也を含め男子生徒はそんな事に何も思わないのだが、女子からはそれらは実に評判がいい。 「なぁ、思ったんだけどお前は保健室に行ってる事に成ってるんだろ? じゃあ、二人一緒に教室に入るのは不味くないか?」  誠也の少し前を歩いている琴美は誠也の言葉を聞くと立ち止まり、クルリと振り返った。 「なんでよ、別に平気でしょ。たまたま教室の目の前であったんだって皆思うでしょ」 「まぁ、そう言われればそうだな……」 「あんたはいいから、遅刻の言い訳でも考えてなさいよ」  琴美は再び校舎に向かって歩き始める。 「言い訳って、あれマジなんだけど……」  独りボソリと呟くと誠也は琴美の後をノロノロと歩き始めた。  その時だった、不運な事に学校のチャイムが響き渡ったのは、時刻は九時半の回っていた。紛れもなく一時間目の授業の終わりを告げるチャイムである。このチャイムが聴こえた時、琴美と誠也は足を止めた。 「あーあ、チャイム鳴っちまったじゃん」 「嘘でしょー」  肩をがっくりと落とす琴美。誠也は頭の後ろで腕を組み、ヘラヘラと笑って琴美の元に近付いていった。  
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