―序―

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   誠也が自らの机に座って三分が経つ。それでもクラスメイトの一人も琴美の姿すらも無い。何故もうすぐ授業が始まるというのに誰も来ない。誠也は寝そべりながら、そう思い。  更に三分経過。何故誰も来ないんだ。誠也は寝そべりながら少し不安に成った。 「次の授業、ホームルームだよな……」  体育や理科などの場合、教室の移動があるはずだと誠也は黒板の横の時間割を目を細めて見た。夏休みに明けの最初の授業に体育や理科等の普通の授業があるわけも無く、紛れもない、時間割はホームルームだ。  先程、「プリントを配らなくちゃ」とかを言っていた琴美の姿も現れる気配すら無い。誠也は立ち上がり廊下を覗く。目に写ったのはシーンとした寂しい廊下と独り寂しい、二階の現状だった。  他の教室を覗きに行くわけでもなく、誠也は自らの机に戻って行った。二年生の誠也には分かる。ホームルームを体育館なんかでやるわけ無いし。常識的にホームルームは教室でやったはず。なら何故、授業の時間を過ぎた今、クラスメイトの姿も教師の姿すら無いんだ。誠也の不安は微量の汗と成って表に出た。  再び寝そべっても何処か落ち着ず、色んな体制に変えてもその気持ちは変わらなかった。それでも時間は確実に一分一秒と過ぎていった。  
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