―始―

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   消えてしまいたいと何度も思った。  春、夏、秋、冬と季節が変わっていくさまを何百回と見た。国と国の争いを何十回と見た。何時の時代も親しくしてくれる人々が気がつけば遥か遠くに行ってしまう。 そんな光景を……何千回と見た。  何も変わらない時間の日々。 悲しみ、苦しみに浸される毎日。  あの人は何と言っていたっけ?あの人は何をしてたっけ?そんな事を考えてると気がつけばまた時代が変わっていく。この先、永遠と続く時間の中で何千回と味わった悲しみと苦しみをこれからも繰り返すのだ。  もうこんな世界は……嫌だ。  悲しみで流す涙をとうの昔に置いてきている。嬉しい時にする表情はとうの昔に忘れてしまった。様々な物も遥か昔に無くしてしまった。  なら、どうすれば良いんだ。  「……そうだ」 ――この世界を消してしまおう。
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