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――
「はぁ、はぁ、はぁ...」
誠也は再び大量の荷物を持ち駅の改札を走っていた。
あの時、時計が自らのポケットにあること知って 『時計を落としたと思ってたんだけどねぇ、まさかポケットに入ってたんなんてボケも怖いもんだねぇ、ありがとうねお兄ちゃん、此で飲み物でも買ってねぇ』そう笑ってお婆ちゃん言うと、そそくさと居なく成ってしまったのだ。
誠也の中に込み上げて来る思いも確かにある。けれど、人助けには代わり無く良いことをした結果、笑える話しに成ってしまっただけの事。はっ!と我に帰った誠也が携帯を見てギリギリの時間だと知り、駅に駆けつけたのだ。
誠也は息を切らし駅の階段を昇る。しかし、ホームに着いたところで、誠也の動きが止まってしまった。
「まじかよ……ちくしょう……」
誠也の目の前を乗らなければいけなかった電車が通り過ぎて行く。遅刻が確定した瞬間だった。ベンチに移動すると頭を下げて大きな溜め息をはいた。
「あのー、すいません」
透き通った少女の声に誠也は重い頭を持ち上げて少女を見上げた。
――偶然なのか必然なのか、これが彼女との最初の出会いだった。
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