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誠也の目に写った少女は美少女だった。クリーム色の制服に身を包んだ小柄な身体から花の様な甘い香りを漂わせ、綺麗な栗色の髪は胸元まで伸び、くりっとした瞳から何か訴えるような眼差しを送っている。
「あのー、すいません」
再び少女が口を開いた。
「ああ! えっと、何か?」
「たぶんそこに私の鞄があると思うんですけど……」
そう言う少女の細く綺麗な指先は誠也の荷物に向けらていた。見ると女の子らしい白い学生鞄が大量の荷物の下敷きになっている。
「え、あぁごめん! 気が付かなくて」
「いえ、そんなに気にしないで下さい。私が鞄を忘れたのがいけないんで」
誠也が下敷きに成っている鞄を慌てて引き抜いた時『ブチッ!』と嫌な音が鳴った。途端に、可愛らしいクマの小さな人形が地面に転がって来ると
「……えっ!?」
「あっ」
二人同時に言葉が出た。鞄にはそれと繋がってたであろう紐が垂れ下がっている。少女は無言でしゃがみこみストラップの人形を拾う。人形が地面に転がって少女が拾うその間、時間にして五秒弱、誠也の思考は停止していた。
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