―序―

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  「ごめん。壊すつもりは全然無くてつい――」 「気にしないで下さい。このストラップ、私に始めて友達が出来た時、その友達がくれた物で。デパートに沢山売ってるって言ってたんで、同じのを買えば友達も気付かないでしょうし」  少女はそう軽い笑みを浮かべ誠也に話す。重い……何故今それを言ったのか真意を問いたいが、それは不可能だ。あかの他人の物を壊してしまったうえ、その物はただのストラップなんて、そんな安い物ではない。誠也の感じたそれを例えるならまさに宝。他人の自慢の一品をけして、壊してはいけない物を誠也は壊してしまったのだ。酷い罪悪感が重くのし掛かる。 「じゃ、じゃあ俺にそれを買わしてくれないかな?」 「いえ、本当気にしないで下さい」 「頼むから俺に買わしてくれ!」 「でも、学校がありますし……」 「じゃあ、学校が終わってからで、ちょっと待って」  誠也はおもむろに携帯を取り出した。後にこの行動で自分はバカをしたと赤面する事になるのだが、今の誠也にそれを考えている余裕はなかった。 「はい、俺の番号とアドレス送るから受信してくれる?」 「え、まぁそれはいいですけど」  少女は鞄から携帯を取り出した。少女が赤外線受信をし完了の効果音が鳴ると、誠也は 「もし俺がなんかで行けなく成ったら連絡するからさ、キミのも教えてくれる?」  続けて、チャラ男やナンパ男のレッテルが付くであろう行動をしてしまった。 「わかりました。今、送りますね」
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