阿部。そのいち。

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赤かった太陽もすっかり落ちて、暗くなったころ私の家についた。 「じゃあ、ありがとうございました」 「おぅ」 そう言っても、立ち去ろうとしないタカヤさん。 いつものクセの首に手を置いて、気まずそうにしている。 「……トイレですか?」 すぐにぱんって音がして、頭を叩かれた。 「んなわけねーだろぉぉ」 「あははっ。いたいたいたい。すみません」 タカヤさんが息を吐く。 私よりずっと高い背、引き締まった筋肉、日に焼けた肌。 カッコいいなぁなんて、見上げてみた。 頭を掴まれた。 本当に情けない話だけど、恋愛経験のない私は、何故だか暴力をふるわれる気がして身構えていた。 ぎゅっと目をつむって、構えていたらおでこに優しい感覚。 え? って目を開けた。 もしかしたら声が出ていたかもしれない。 目を開けるとそこにはやっぱりあたしの大好きなタカヤさんがいて。 顔を真っ赤にして、それを見られないように手で顔を隠している。 真っ暗な中でもタカヤさんだけは輝いて見えた。 「あー…俺は、その、口も悪いし、野球のことしか考えてねぇけど」 照れてるタカヤさん。 「ちゃんと考えてるから」 思わず頬が緩んだ。 なんて可愛い人だろう。 「あってめぇ! もう絶対言ってやんねぇからな!」 「あははっすみませんーそんな回りくどいこと言って理解出来るのあたしだけですよ?」 「……いいんだよ。お前にしかいわねぇんだから」 私の彼氏は 誰よりもカッコよくて 誰よりも眩しい。
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