第一話 日溜まりの日々

3/8

5人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
着替え終えたスバルは、洗面所で顔を洗っていた。 泡を洗い流し、手早くタオルで滴を拭う。 寝癖ではねまくっていた髪は、櫛で整えられシルクの様にさらりと真っ直ぐ伸びている。 スバルは、お気に入りの空色のシュシュで髪を一つに縛り、ポニーテールにした。 鏡の前で入念に自分の姿をチェックし、満足げに頷くと、洗面所を出てリビングに歩いて行った。 キッチンに入ると、朝食のトーストの香ばしい匂いが、スバルの鼻をくすぐる。 因みに高町家の朝食は、和風洋風と日によって違う。 「おはよ。母さん」 スバルは台所で朝食を作っている母、千世(ちよ)に挨拶した。 千世は茶髪のショートカットの、活発そうな印象を感じる女性だった。 「おはよう。今日は自分で起きれたのね」 「うん。あ、おはよう父さん」 スバルは椅子に座りながら、新聞を読んでいる向かい側の父に話し掛ける。 「…ああ」 無口な父、春信の返事は素っ気ない。 昔っからなので、特に気にする事はないが。 「いっただきまーす」 元気に挨拶すると、スバルは焼き上がったバターを塗ったトーストにかじりついた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加