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逆に唐澤を冷静にさせた。
「なんだこれ。……片づけるか」
飛び散った羽は掃除機では吸えない。ほうきがあったらいいが、あいにくほうきはない。それに代わるものを探していたら、玄関にほうきがあった。
「おかしいな。ほうきを買った記憶がない」
玄関から戻ると、散らばった羽が一か所に集められていた。窓から入り込む風が原因らしい。
「おもしろくなってきた。いつの間にか片付いてあるし他に別の事をやろう。とりあえず、この時代の情報をあつめないといけないな」
机の椅子に座り、起動しているパソコンで検索を始める。唐澤はキーボードに初めて触れた。現実の世界では、人間に流れている電気信号をパソコンが読み取り思考を解析する。検索したいことを自動的に表示してくれるので、コードで繋がれているキーボードはない。あるとしても、タブレットだが使用する機会は皆無といっていい。最初は、人差し指で文字を打つ。ボタンの感触に感動している。
驚異の三六二連打。
飽きることなく、無意味な文字を愉しそうに打ち込む。
「指が疲れてきた。昔の奴は大変だったろうな。しかもなんだよ。《hふwbfcywbms》って。全く意味がない。こういう、無駄な事も含まれているんだから、あの時も大騒ぎになったんだな」
人工知能を搭載する実験の際には、インターネット上の膨大な情報量により故障することが多かった。意味の無い情報、または虚偽が八割にも及んでいる。無駄な情報の削除が問題の解決に結びついていた。
カレンダーをみると二〇一三年十月二十三日、午前七時三十八分と表示されていた。
「十三年……平成二十五年か。俺が生まれるずっと前だな」
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