夜汽車の霊夢

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もう遅い時間となると、 夜汽車の中の空気は、不穏なまでに怪しかった。 今日も大勢の人間を乗せたことだろう。 しかし、ある時間から一斉に人間が散り、1日分たまりにたまった人間の臭いだけが残った。 そんな空気だった。 まばらどころか、閑散とした席。 元手が取れるとは思えない寂しさだった。 時おり差し込む人家の灯りも寂しく、 そして、今しがた乗ってきた女の懐も、同じくらい寂しかった。
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