夜汽車の霊夢

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懐を、ではなく、女は腋をまさぐり始める。 腋を見せつけんばかりだ。 車掌は興味なさげに、キュウリをかじって眺めていた。 「はい切符」 「…はい確かに」 またひとかじりして、車掌は奥に消える。 その様子を念入りに見送って。 (これで邪魔は入らない) ついにという思いで、女なビニール袋に手をかけた。 中身は……和紙で被われ、紐で丁寧にリボン結びされた弁当箱。 もう待ちきれず、女はフタに噛みつくと、そのままひっぺがした。
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