逮捕と繋がる記憶

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 ――視界が眩い光で満たされている。それはあったかくて、何故か懐かしい。  そんな幸せな夢の途中、誰かが俺を呼んだ気がした。  零?もしかして、お前なのか?  そんな気がして俺は、俺を見下ろすボヤけた輪郭に向かって手を伸ばした。俺は大丈夫だって、伝えなきゃ。俺以外に、誰があの不器用な零をサポートするんだ。 「翔ちゃん――翔ちゃん! 良かった、目が覚めたんだね!」  ……どう見ても、零のお母さんでした。残念無念、看病してくれる幼馴染みキタ、コレ!と叫びたかったのだが。 「お母さん」  足元付近で、正真正銘の零の声が聞こえた。俺は喜びにうち震えながら顔を上げようとしたが、ツキンとした痛みが頭を駆け巡る。 「翔ちゃん、あなた頭を打って脳震盪を起こして、おまけに微熱まで出ているんだから、まだ安静にしていなきゃダメよ……零、わたしはタオルを絞って、とお願いしたはずなんだけど。 どうしてタオルがまだビショビショなの?」 「絞っても水が出てこない」 「……貸しなさい、わたしがやるわ。 あなたは翔ちゃんとお話しておいて」 「わかった」  殆ど身体を動かせない俺の頭上で、親子の声が飛び交う。零の姿は見えないが、毎日零を見てきた俺からすると、だいたいの様子が想像できて、笑いを必死に堪えた。つーか零の母さんでも、零の不器用っぷりは謎の領域まで達しているのな。  俺の視界から零の母さんが消えて、代わりに零が現れる。普段からあまり変わらない表情だが、それでも俺を心配してくれているのが、シワが寄った眉間と、そのおかげで繋がりそうになっている眉から読み取れる。 「翔太、大丈夫か?」 「おう、そんな心配するなよ。 俺は大丈夫だ」  普段は俺の方が気遣っているのに、何だか変な気分だ。零は何を話したら良いかわからないのか、そのまま黙って俯いてしまった。まずい、これは空気を変えなければ。  そんなわけでふと、俺の方から口を開く。 「猫はどうした?」  一瞬、零はキョトンとしたが、すぐにあっと声を上げ、柔かな笑みを浮かべた。 「あの後、うちの裏庭にいたところを見つけて捕まえた。 だから、それはもう心配ない」
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