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零の話をまとめると白百合は今、お仕置きということで捕獲後、しっかりと室内に隔離されてしまったらしい。また、絵筆は彼女がいつの間にやら作った隠れ家に保管されていたとも。猫にそんな収集癖があったとは。
「その、白百合の隠れ家なんだが……翔太」
「何か困った場所に作っていたのか?」
急に零が申し訳なさそうな表情になり、俺の背中には冷や汗が伝う。微熱と痛みでこれ以上動くのは無理。頼むから、大事になっているという報告なら勘弁してくれ。
「……二人でタイム・カプセルを埋めたの、覚えているか?」
「あ、あぁ……」
俺はドキリと心臓が縮み上がる思いで返事をした。タイム・カプセルのことはさっき、夢で見て思い出したところだ。それまですっかり忘れていたなんて、絶対に言えねぇ。
***
幼稚園を卒園した日、俺は零と零の家にある裏庭に来ていた。
零の家は神社で、その敷地はかなりのもの。子ども達には絶好の遊び場で、土遊びに木登りにおままごと、それから、密かに秘密基地を作ることもあった。
そして、裏庭の奥にはポツンと寂しく佇む石碑が一つ。何が書かれているかなんて、当時の俺達は知る由もない。片手にスコップを、もう片方の手にはそれぞれ思い出の品を持って、卒園の日、俺たちはそこにいた。
スコップで掘れる所まで一生懸命掘って、手は泥だらけ、まだ寒いっていうのに、額の汗が滝の様に流れる。
そして日が沈みかけた頃、ようやく思い出の品がすっぽり埋まるところまで穴を掘れた。俺は歓声を上げ、ドキドキしながら思い出の品を零と一緒に埋めた。
「零は何を埋めた?」
お互いが持ってきた思い出の品は、長い年月の中で風化してしまわないようにと、ブリキの缶詰にそれぞれ厳重に保管され、中身が見えないようになっていた。
「……秘密」
「ちえっ!零のケチ!!」
「これを開ける頃にはわかる」
俺が頬を膨らませて、地団駄を踏みながら抗議しても、零は落ち着いていて、絶対に教えてはくれなかった。
「俺が埋めたもの教えるから!
ちょっとだけ!」
「……ダメ」
あ、この時はちょっとだけ迷っていたかもしれないな。当時から零はあまり自分の気持ちを言う子どもじゃなかったから、俺は表情で零の感情を読み取っていた気がする。
「ねぇ、翔太。
タイム・カプセルは、いつになったら掘り起こすものなの?」
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