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「えー、次の議題に移ります。
昨日、美術室の備品である筆が、数本なくなっていたそうです。
これで三回目なので、早々に手を打たなくてはいけません」
小柄で、丸っこい坊っちゃん頭の副会長が、手に持っている資料を読みながら言った。俺はこいつが気に食わない。零に話しかける時には、若干どもる女々しい奴だ。つーか、零を意識していそうな奴は全員好きになれねぇ。
「会長、ど、どうします?
風紀委員や美術部とも連携を取って、な、何か対策する必要が」
ほらな、やっぱりどもってやがる。いつかシメねぇとな。まぁ、実際にはいつもシメられる側だけどな。
零はコの字に配置された机の真ん中にある会長席に座り、ひじをたてて手首を組んでいた。こういう時は何か考えている、問題発言が飛ぶぞ。
「それは、わたしが調査しよう」
一瞬、場の空気が凍りついた。その場にいる役員全員が、会長から目が離せずにいる。
「誰かが美術室やその周辺を調べる必要がある。
その役割はわたしがやろう。
この会議が終わったら、放課後少し残って美術室を見張る」
零は周りの空気を読まず、堂々とのたまった。が、クールに話す零のあまりの冷静さに、生徒会役員達は勘違いをしたようだ。
「会長、素晴らしいです!
自分から動こうなんて、なんて正義感の強い……!」
副会長が両手に握り拳を作って、感動している。他の役員もそれを聞いて零に拍手を送った。
だが、俺は知っている。零のさっきの言葉をイマドキの女子風にすると。
「はい!わたしが美術室を見張るわ!
一度こんな探偵みたいなこと、やってみたかったのよね!」
だ。彼女の口数は今も昔も少ないが、俺は零をよく知っているからわかる。
「じゃ、俺も見張ろう」
議題を記録書に写し終えた俺は、零に向かってそう言った。生徒会の視線が、今度は書記という地味な役割の俺に集中した。
「少しは男手があった方が良いだろ」
「か、会長!僕も是非、お供させて下さい!パシリでもなんでもやります!!」
しれっと俺が言うと、副会長も乗ってきやがる。こいつ、パシリって、零は女王様かよ。まさかマゾなのか?
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