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「うむ、確かに助手は不可欠だな。
だが、見張りが沢山いたら目立つだろう。
副会長、気持ちだけありがたく受け取っておこう」
気分は既にシャーロック・ホームズの零は、俺をワトソンに選んだらしい。もちろんそれは、俺の計算だ。副会長は端から見れば、分かりやすく項垂れている。へっ、ざまぁ見ろ。
「キタコレ会長、正義感があるのは良いですけど、気をつけて下さいね!
あ、ついでに南部君も」
「むしろ何か危険なことがあったら、翔太を盾にして逃げるんですよ」
会議が終わると同時に、役員達がそう声をかけて会議室を出ていく。おれはオマケで、零の盾かよ。ついでに副会長の羨みがましい視線も受け取っておこう。
「じゃあ、零。
美術室に行くぞ……って、何してるんだ」
俺は横にいるはずの零に声をかけた。
キョトンとした顔をして、零は振り向く。その手は零の鞄に突っ込まれており、中身をあさっていた。
「少し、必要なものをな――あぁ、あった、これだ」
そう言って、零は虫眼鏡を取り出した。おい、いつもそんなものを常備しているのか。本気でシャーロック・レイムズになるつもりらしい。
まぁ、いつもと違う雰囲気の零を見ることが出来る上に、二人っきりだ。来たぞ、これは来た。今、運命は俺に微笑みかけている。
零は鞄を閉じて肩に下げると、行くぞ、と言いながら颯爽と教室を出ていく。俺はやれやれ、と苦笑しながらも、足取りは軽く、彼女の後に続いた。
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