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「.....うず、...ぼうず、坊主!」
体を激しく揺らされ、耳元で何かが爆発したんじゃないかと思うくらいの爆音が耳に鳴り響く。
その音源は、僕を覗きこむいかにもホームレスなじいさんだ。
髭をサンタさんみたいに伸びてて、顔や身体は薄汚れている。
服はボロボロで、髪だって延びたい放題延びいる。
僕も、髭こそ延びていないが、見た目は殆ど変わりはないし、着てる服だって穴だらけの服。
顔も普通。髪は坊主だ。
ここにはバリカンしかない。
最も、ここの区域に住む500人は僕も含めそんな人達ばっかだ。
僕と違うと言えば、皆明らに60、70歳の人で僕だけ19歳という若さだけだろう。
「なんですか、いきなり。」
両耳に手をあて普通に起こせよと内心思いながら、寝ていた河川敷の地面から上半身を起こす。
それと一緒にあの臭いもくる。
「この俺様が飯だと起こしてやってきてその態度はなんじゃ!」
「もうそんな時間でしたか」
確かに、辺りは真っ暗。
耳から手をはずし、心の籠らない感謝を伝え一息つく。
最近、よく起こしに来てくれる。
余程暇なのだろう。
大人しくしていれば、食って寝て死期を待つしかないからそりゃ暇か。
飯を食べる場所はこの河川敷のすぐ上にある広場で配給が行われる。
河川敷には僕のいた場所の近くに、僕の背丈ほどのコンクリートで囲われた、通称ごみ捨て場があり、下ったとこには、川があり、死体で一杯になっている。
これが、臭いの正体か。
右に少し行けば、集団小屋があり、そこで寝ることになっている。
それにしてもこのじいさんはなかなかファンキーだ。見た目からしても80はとうに越えているのはわかるのに、一人称は俺様とはなかなかいない。
「それじゃ、行きましょうか。猿吉さん。」
俺様じいさんにそう言って、体を立たせ歩き出す。
「おい、待て。」
歩き出してすぐに、また後ろから爆音が聴こえるが、気にしないで、配給が行われている広場にはや歩きする。
腹減った。
「待たんか!!」
猿吉さんは小走りで僕に追い付いて、ボロボロのシミの付きまくった僕の服を引っ張る。千切れそうだが気にせずそのまま引きずっていく。
面倒くさい人だ。
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