BLOCK-ブロック-

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 ある日、それは突然、現れた。  閉めきられた部屋の中に一人、正座している男がいた。つい最近まで、出歩いていたらしく、肌は日に焼けていた。だが、それは、ほんの数日前までの話だ。彼は今、部屋の窓には目張りをして外の光りが一切、入ってこないようにしていた。出入り口にも内側から鍵を掛け、外からは開かないようにしていた。彼は無言のまま、目の前にあるモノを見ていた。  男の前には、白いブロックが一個、置いてあった。一辺が五〇センチの綺麗な立方体だ。素材がなんなのかは分からないが、白く美しい側面は触ってみるとワックスでも塗ってあるのか、滑らかな触感だった。また、しばらく、側面に触れていると、柔らかみのある暖かさを感じた。まるで、生き物にでも触れているかのような。だが、それは恐らく彼自身の体温なのであろう。  男はブロックと対面して以来、一切食事をとっていなかった。当然だろう。その日を境に、彼は外界との接触を断ったのだから。部屋には彼とブロック以外、何もない。そこは、二人だけの世界だ。都会の喧噪など、彼にとっては過去の遺物でしかない。彼はただ、ブロックを正座して見つめているだけの毎日を送っていた。食事もしない、寝もしない、そんな毎日だ。  そして、そんな生活を送っていた男はブロックを抱いたままの姿勢で息絶えているのが発見された。彼を心配した親友達が強引に出入り口の扉。それを開け、中へと入った。そこで、彼は死んでいるのを見つけた。死因は、栄養失調によるものであったが、唯一、残った謎がある。  ブロックだ。男が、どこで、このブロックを手に入れたのか。それは謎のままだった。そして、それが何故、死へと直結する形となったのか。全ては分からないことだらけだった。  最近、大きな事件もなく記事を持て余していた、マスコミは挙って、この事件を記事にした。 ----社交的な男性に何が起こったのか!? ----男の傍には、謎のブロックが!組織的犯罪か? ----ブロックは新種の薬物なのか!若者の間で拡大する薬物依存の恐怖!  などと、無責任な報道が飛び交うも、全ては場を盛り上げて為だけの見出しにすぎない。やはり、一番の注目の的となったのは、現場に残されたブロックであった。
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