BLOCK-ブロック-

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 誰がいつ、どうやってブロックを届けているのか。知りようがない。どんなに厳重なはずの施設の中ですら、ブロックは現れた。ブロックが届けられた人間は、誰であろうと正気を失うらしくブロックにしがみついて離れようとしない。正常な人間が、ブロックから人を引き離そうと試みるも、無駄だった。必死に抵抗してブロックを離そうとしない。外に響くほどの怒声をあげ抵抗する者もいれば、泣き叫ぶ者もいた。  誰の手にも負えない。それが、誰もが思った感想だった。それに、遅かれ早かれ、いつの日か自分の元にもブロックが届くのではないのかと思うと恐怖で怯えた。そして、いざ、ブロックが届くと、その恐怖を忘れるかのようにブロックに魅入られるのだ。  ブロックは静かであるが、その数を増やしていった。一人、一人とブロックにすがり、やがて、死んでいく。穏やかであるが、確実な滅亡がそこにはあった。  ブロックが出現してから、どれほどの年月が過ぎただろうか。人は滅び、時を刻む者がいなくなった世界で時間の概念など無意味だった。人は室内で風化しブロックだけが残された。  幾多の天候の変化や災害があったか。それでも、ブロックは存在し続けた。そして、それは百年目を迎えた、ある朝のことだ。  沈黙していたブロックが突然、動きだした。閉じられた部屋の壁に角を自らの意思で激突させ、外へと出ようとしていた。それは、まるで、卵から外に出ようとしているヒナ鳥のようだった。人類が死滅し、残された動物や植物によって再生が始まった地球に、新たな生命体が誕生しようとしていた。  全ては、かつて人が神と呼んだ者によって仕組まれたことだった。この汚れた星を再生させる為に行った所業である。そうとは、誰も気付かなかった。それに、例え、誰かが気付いていたとしても、それは人類がいない世界では意味のないことなのだ。
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