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①ハンディを使用して棚卸し
この仕事は、大型店舗で働いていた私にとって経験済なので、初バイトにはならないと思いました。詳細を知りたくて面接の時間を貰いました。
速さと正確さが求められますが一心不乱に数を数えスキャンして入力する黙々作業が嫌いではないんです。体力的には立ち仕事と同じ位ハードですが、接客を意識しないで集中できます。
国道沿いから一本奥にある、大きな駅の徒歩5分圏内にあります小さなビルを、地図アプリを必死に見ながら到達しました。
実は方向音痴です。
傘をさしても、ほんのり湿ってしまった髪を撫でつけ、エレベーターのボタンを押しました。
エレベーターが開くと、目の前には曇りガラスのドア一つ。インターフォンを鳴らして入室です。久しぶりの面接です。
(うっわぁ~!化粧濃ぉっ!)
失礼しました。心の声がつい。白ブラウスにグレーのパンツスタイル。緩く波打つような髪を束ねていましたが、ムダに茶色で浮いて見えます。
人見知りで視線を合わすことが苦手ですが、面接は自分をアピールするショーだと認識しています。履歴書は不利ですから。
私より年上の女性面接官が淡々と話します。
「経験未経験は関係ありません。仕事内容を説明します。」
香水の匂いが思考を邪魔をします。時々、頷くフリをして匂いを拡散させつつ、手元の資料を目で追いました。履歴書持参も不要で、現在の職歴を箇条書きするだけでした。
(ひいぃ~!雨の匂いと混ざってタイヘン!)
「何か質問は?」
一ヶ月間どれくらいシフトに入れるか(=収入はどれくらい)を聞きました。バレンタインチョコと同じ結果では困ります。
「簡単なテストを20分間で解答して下さい。」
(ギャー!!出たっ。もしや香水は意識撹乱させるためワザと?)
今までの顔付きが演技で、この瞬間が本気と書いてマジ!!!!
もしかしたらバレバレかもしれませんね。一般常識を呻きながら書いていき、汗だくでシャーペンを走らせました。
(ダメだ。面接官に化けた先生に見える。)
「最後にこの用紙内にある、ひらがなの“の”に全て丸印をつけて下さい。」
このテストは判断材料に最適だと思い感心しましたが、実際は“の”を目で追うだけで精一杯なアラフォーでした。
ーーー撃沈。
と思っていたら、まさかの内定の電話を頂戴しました。
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