エピソード3

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私は1回深呼吸をしてから電話に出た。 「もしもし?」 『優、お疲れ』 携帯から聞こえてくる低く、甘く、優しい声。 その声を聞いた瞬間胸が高鳴る。 数時間前まで一緒にいたというのに、声を聞いた瞬間に会いたくなってしまった。 『学校、大丈夫か?』 「うん。なんとか・・・」 『何とかって、何かあったのか?』 気のせいか声が大きくなり真剣味を帯びた声に変わった。 「いや!なにもないけど」 『けど?』 「みんな私を見てくるのが気になって・・・」 『・・・あぁ』 京さんの声が穏やかな返事に変わった。 『大丈夫だ』 不思議だ。 何の根拠もない"大丈夫"という言葉でも、この人が言うと安心できる。 今日さんの声、漆黒の瞳に宿る自信が私にそう思わせてるのかもしれない。 『そのうち落ち着くだろ』 渉と同じ事を言う京さん。 そのうちって、いつ?という疑問は消せないが、『少しの間我慢できるか?』という言葉に頷いた。 『今昼休みか?』 「うん。渉と一緒に屋上で煙草吸ってたの」 『煙草?』 言ってしまってから気がついた。 学校で堂々と煙草吸ってます宣言をした事に。 「あ、いや・・・っていうのは嘘で・・・学校で煙草とか・・・吸ってない・・です」 「ぶっ!」 隣で爆笑し始める渉。 携帯からも京さんの笑い声が聞こえてきた。
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