15人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「………………で、なんでお前はそれを俺に言う?」
「先生は経験豊富じゃん」
「…………」
「どっちもいけるんでしょ?」
「それはそうだけどよ」
どっちもいけるんだろ。
そんなことを生徒に言われる教師ってどうなんだろう。
「そりゃ、先輩がそんなつもりじゃないってわかってたよ」
「…………でもキスしたんだろ?」
「しました」
「お前それはいくらなんでもよ……」
「ノンケの先輩に不意打ちしました」
「潔く認めてもさあ、それはいかんだろ」
「だよね……」
とたんにしゅんとする教え子。
見た目は中性的だから、その表情はよく似合っている。
正直、可愛いのだ。
「むしろ、押し倒したときすっげえ興奮した」
「………………おい変態帰れ」
「やだ先生助けてよー!」
「なんで俺はお前の恋愛相談しなきゃならねえんだよ……」
なんて言っておきながら、高橋は内心この時間を楽しんでいた。
火曜水曜金曜日、昼休みの理科準備室。
教え子の鈴木のために鍵を開けて待つ。
「だから、先生しかわかってくんないの」
「お前に俺が両刀だって言ったのはそういうつもりじゃねえよ?」
「わかってるよ」
鈴木に自分がどっちもいけることを打ち明けたのは、恋愛相談を受けるためじゃない。
そのときは、まだ鈴木が男もいけるなんて思っていなかった。
最初のコメントを投稿しよう!