1章

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浅葱誠  性別:女 桃園咲良 性別:男 この2人、よく名前から性別を誤解される。 そして誤解される要因は、2人の外見にもある。 誠は、少し癖のある焦げ茶の髪を、肩よりも短い位置で切り揃えている。 また、中世的な顔立ちに男勝りな面、言葉使いの荒さから女だと全く気付かれないこともしばしば。 咲良は、癖のないストレートの黒髪を襟足の辺りまで伸ばしている。 整った顔立ち、丁寧な言葉使いや礼儀正しさが相まって、男とは思わずに接する人も居るくらいだ。 2人は似た境遇で、色々と苦労の多い日常を送っている。 さて、話を戻しまして。 先程から、2人は口論の真っ最中。 この2人を止められる者は、古谷先生含め部内には誰もいない。 いや、正確には居なかった。 その時までは。 ガラッ ? 「こんにちは!顔出しに来ましたー!」 建物中に響いたその声に、口論を続けていた2人を含め、全員黙ってそちらの方を向くと。 誠 「咲姉!」 咲良 「……姉貴」 古谷 「桃園!ちょうどいいとこに来た!」 咲夜 「………はい?」 彼女の名前は、桃園咲夜(モモゾノ サクヤ)。 先月まで剣道部部長をしていた、現在高校3年生。 れっきとした咲良の実の姉である。 弟と同じく整った顔立ちに、さばさばした性格。 思ったことは口にするが、しかし決して他者の悪口を言わないことから、男女問わずから人気者である。 ココだけの話、この桃園姉弟にはファンクラブが存在し、かなりの人数が会員で、その中には他校生や社会人まで居るとか居ないとか……。 誠、咲良、咲夜。 この3人は、父親同士が親友でさらに家も近所であるため、幼い頃からの仲、所謂幼馴染の関係なのだ。 誠の両親が家を空けることが多いため桃園家で預かる、という光景は過去何度もあった。 そのおかげか、誠は桃園家の一員と言っても過言ではないのだ。 咲夜 「何?ま~たつまんないことでケンカしてたの?」 呆れたように咲夜が言った。 誠 「違ぇーよ、咲姉!咲良が……!」 咲良 「俺は、正論を言っただけだ」 咲夜 「はいはい、分かったから。んじゃまず、  咲良、謝ろうか」 咲良 「はぁっ!?何で俺が!」 咲夜 「何言ってんのよ。そんなの、  私の誠だからに決まってんでしょ!」
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