13人が本棚に入れています
本棚に追加
ド――ンッ!、という効果音が付くだろう咲夜の発言は、先程よりも建物中に響き渡った。
この桃園咲夜、実の弟である咲良を始め他人に厳しいのだが、幼馴染で妹のような誠にはとことん甘くなるのだ。
それはもう目に入れても痛くない位に。
何事も誠中心な彼女に、毎度咲良は振り回されているのだ。
剣道部部員や古谷先生は、またかと苦笑し呆れている。
新入部員は、何が何だか分かっていないみたいだが。
この光景は、剣道部では日常茶飯事だ。
咲良は、この人に何を言っても無駄なのだろうと、肩を落とした。
対して咲夜は、フンッ、と笑顔で腕組みすると、壁にかけてある時計に目をやり口を開いた。
咲夜
「もうすぐ柔道部との交代の時間じゃないの?」
武道館は、剣道部と柔道部が兼用している場所で、これからの時間は柔道部が使用することになっている。
古谷
「お、もうそんな時間か。よし、全員片付け開始!」
「「「はい!!」」」
自分たちの使った竹刀や防具を仕舞い、モップをかける。
咲夜
「誠!早く片付けてさ、一緒に帰ろ!」
誠
「うん!」
咲良
「(……それが目的か)」
――――――――――――
――――――――――
――――――――
片づけを済まし、館内の更衣室で着替えた誠は外に出た。
武道館の前には、咲夜とすでに着替え終わった咲良がいた。
咲夜は、出てきた誠の恰好を見て溜息を吐いた。
咲夜
「またあんたは。何~、その恰好」
誠は今、制服のスカートに学校指定のジャージをはいている。
裾は両方とも、膝下辺りまで捲り上げている。
誠
「いいのいいの、これで。こっちの方が何かあった時に対処しやすいしさ~」
咲夜
「ま、あんたがいいならいっか」
咲良
「いや、寧ろダメだろ。女子として。」
3人は並んで校門の方へと歩いていく。
すると、何処からともなく黄色い悲鳴が聞こえだした。
「おい!咲夜さんだ!」
「いつ見ても美人だよなぁ」
「咲良君てば、クールでちょーカッコいい!」
「あたし、彼氏にするなら咲良君みたいな人がいいな」
「「ホント、いつ見ても目の保養だよ、あの姉弟」」
どこかの芸能人よろし、騒がれる2人。
何でも、登下校時に2人を見るとその後はいいことがある、何て噂があるくらいだ。
最初のコメントを投稿しよう!