1章

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ド――ンッ!、という効果音が付くだろう咲夜の発言は、先程よりも建物中に響き渡った。 この桃園咲夜、実の弟である咲良を始め他人に厳しいのだが、幼馴染で妹のような誠にはとことん甘くなるのだ。 それはもう目に入れても痛くない位に。 何事も誠中心な彼女に、毎度咲良は振り回されているのだ。 剣道部部員や古谷先生は、またかと苦笑し呆れている。 新入部員は、何が何だか分かっていないみたいだが。 この光景は、剣道部では日常茶飯事だ。 咲良は、この人に何を言っても無駄なのだろうと、肩を落とした。 対して咲夜は、フンッ、と笑顔で腕組みすると、壁にかけてある時計に目をやり口を開いた。 咲夜 「もうすぐ柔道部との交代の時間じゃないの?」 武道館は、剣道部と柔道部が兼用している場所で、これからの時間は柔道部が使用することになっている。 古谷 「お、もうそんな時間か。よし、全員片付け開始!」 「「「はい!!」」」 自分たちの使った竹刀や防具を仕舞い、モップをかける。 咲夜 「誠!早く片付けてさ、一緒に帰ろ!」 誠 「うん!」 咲良 「(……それが目的か)」 ―――――――――――― ―――――――――― ―――――――― 片づけを済まし、館内の更衣室で着替えた誠は外に出た。 武道館の前には、咲夜とすでに着替え終わった咲良がいた。 咲夜は、出てきた誠の恰好を見て溜息を吐いた。 咲夜 「またあんたは。何~、その恰好」 誠は今、制服のスカートに学校指定のジャージをはいている。 裾は両方とも、膝下辺りまで捲り上げている。 誠 「いいのいいの、これで。こっちの方が何かあった時に対処しやすいしさ~」 咲夜 「ま、あんたがいいならいっか」 咲良 「いや、寧ろダメだろ。女子として。」 3人は並んで校門の方へと歩いていく。 すると、何処からともなく黄色い悲鳴が聞こえだした。 「おい!咲夜さんだ!」 「いつ見ても美人だよなぁ」 「咲良君てば、クールでちょーカッコいい!」 「あたし、彼氏にするなら咲良君みたいな人がいいな」 「「ホント、いつ見ても目の保養だよ、あの姉弟」」 どこかの芸能人よろし、騒がれる2人。 何でも、登下校時に2人を見るとその後はいいことがある、何て噂があるくらいだ。
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