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雅が憂鬱そうにため息を吐くのも無理はない。人数が多すぎる。
嫌そうな顔で空を仰ぎ見た雅はあることに気付く。そういえばここは彼らの通過箇所。
口元に笑みを浮かべ男たちに視線を戻した雅は左腕をゆっくり横に伸ばした。
きっと来るはず。彼らのボスは自分と契約という友の縁を結んだたった一匹の野生動物。
いつもは自由にさせ用があるときしか呼ばないけれど…
いつまでも従ってくれる優しく気高い彼ら。
その時はすぐやってきた。雅の腕にいきなりズシンと重さが掛かる。
「久しぶり、鷹翅(タカハネ)。元気だった?」
横を見れば懐かしい顔。嘴の先が緑色で左翼の根元にある緑色のバンド。
鷹翅は鋭く一声鳴くと雅に顔を擦り付けて甘える。
「そう、交代したの。じゃあこれからは俺と居てくれるんだ!」
まるで会話しているかのような様子に男たちは気味の悪さを覚えた。
凄まじい羽音に上を見上げれば多くの鷹が頭上を埋め尽くしていた。
驚く男たちをよそに雅の足元に一匹の鷹が降り立つ。まだ若い鷹のようだ。
「君が新しいボスさん?鷹翅と来てくれてありがとう。」
雅がお礼を言えば鋭く一声鳴く。それに何度が頷いた雅はニッコリ笑った。
指先で頭を撫で飛び立つ鷹を見送る。頭上を見上げていた視線を下ろし呆然としている男たちに笑みを向けた。
「さぁてと…おじさんたちさぁ、なんで攻撃してくんの?」
「黙れ、化け物!」
「む。化け物じゃないもん!」
問いかければ暴言が返ってきて言い返すも更に化け物だと言われる。
鷹翅が鋭く鳴き、だんだん雅の怒りのボルテージも上がってくる。
闘志漲る様子に男たちは硬直した。まるで蛇に睨まれた蛙のように動けない。
雅は鷹翅が飛び立つと同時に左腕を上げ、すぐに下にさげた。
雅の指示に従い鷹翅を筆頭に野生のはずの鷹たちが男たちに襲いかかる。
肉食である鷹の武器は凄まじい。ほうほうの体で男たちは逃げ出していく。
再び伸ばされた腕に戻った鷹翅が鳴き雅が手を振れば頭上にいた鷹たちは一斉に鳴き目的地にまで飛んでいく。
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