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鷹翅と共に群れを見送った雅は目の前にあるだだっ広い草原を見渡す。
高い木々もなく草花ばかりが咲き乱れていて心が和んでくる。
「風が気もちーね、鷹翅~?いっぱいお花が咲いてるよ~!」
雅が話しかければ鷹翅が鋭く鳴きそれに何度も雅が頷く。
この先にある目的地。雅は期待に胸膨らませながら歩き出した。
途中、フワリと風が頬を撫でていく。その中に微かに漂う異臭。
眉を寄せた雅は鷹翅を飛ばすと自身もそちらに向かって走り出した。
走りながらざわめく胸を押さえて考えるも面倒になり考えることを放棄する。
半ば跳ねるように走りたどり着いた場所。そこに居たのは黒衣の青年と蜘蛛の形をした明らかに大きさのおかしい異形の化け物。
雅は唇を舐めると口角を上げて笑う。
高く響く指笛で鷹翅を呼べば化け物の意識が一瞬だけ此方を向く。
その間に猛ダッシュで駆け寄り巻布を取り払った家宝を広げる。
蜘蛛らしくない獰猛な唸り声に雅は冷や汗を流しながらも構えた。
蜘蛛は明らかに消耗している。雅は周囲を取り囲む風に意識を伝わせ操る。
蜘蛛が一声唸り、突進してくれば唇を舐めて大丈夫だと確信する。
扇子を一気に広げクルッと一回転すれば扇子の上に巨大な空気の塊が出来る。
それを猪突猛進よろしく突っ込んでくる蜘蛛に投げつけ…
「空圧低下!」
雅が叫べば空気の塊に切り刻まれた蜘蛛だったモノがペチャンコに潰れる。
当たり前だが、動かないのを確認した雅は後ろを振り返った。
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