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一方、入口に放置されている青年はというと…小さく寝息をたてながら眠って居た。
その様子を大人しく見守る鷹翅。たまに周りをうろうろしているが基本的にあまり動こうとしない。
少し前まで自由に飛んでいた空を仰ぎ見た鷹翅は再び青年に目を向ける。
滅多なことでは命令せず、自分を友として接してくれる心優しき主のため、何かあったら自分が守らなければならないと思っていた。
鷹翅が決意を固めていたその頃、雅は白兎によって森深くにある社にやってきていた。
「ここ?兎ちゃん。」
雅が問い掛ければ頷くかわりに耳が動く。どうやらここのようだ。
荒屋と化している社にはまだ微かに神聖な空気が漂っている。
鳥居をくぐり抜け本殿に脚を進める。壊れている格子襖の隙間から中に入れば祭壇に鎮座する髪飾り。
手に取ればフワリと体を風が包む。持って行くよう言う声が聞こえ羽飾りの上に付ければ自然と本殿を出た。
鳥居をくぐって振り返り、深々と頭を下げた雅が見たのは役目を終え廃虚と化した社。
もう一度深々と頭を下げ、白兎に連れられるまま再び森の入口へと戻った。
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