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時を少し遡った森の入口。そこに置いてけぼりにされた青年が目を覚ました。
青年ー駿は目の前にいる鷹を見て思い出す。自分を眠らせてまで森に入った彼。
とりあえずと立ち上がった駿は自分の体が軽いことに気が付いた。
蜘蛛の形をした異形の化け物と戦った時に負傷し、魔力も少なかったはず。
首を傾げていれば銅像のように動かなかった鷹が一声鳴いた。
『姫の御配慮だ。感謝しろ、人間。』
その時脳内に流れ込んできた声に驚き鷹をマジマジと見つめてしまう。
『何を驚くことがある。貴様も魔力を扱う一族ならば動物の声くらい聞こえよう。』
「あんた…何者なんだ。」
『我が名は鷹翅。姫にいただいた名だが気に入っておる。』
「ちょっと待て。姫ってアイツのことだろ?ありゃ男だぜ?」
『何だ、その言い方は!姫を侮辱する気か!』
鼻を鳴らさん勢いで偉そうな口をきく鷹に呆れながら問いかけた。
すると名を名乗りわけのわからないことを言う鷹。でも鷹の言う姫が誰かは分かった。森の中にいるはずの青年。
しかし姫とは高貴な女人に使う言葉ではなかっただろうか。
間違っても男には使わないはず。そう思って言えば鷹から激怒の声が聞こえてきた。
駿はため息を吐き出す。何だか面倒なヤツな気がした。
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