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それは巨大なミミズのような化け物の大群。
家の前に戻り焔から降り嫌そうにため息を吐き出しながら陽翔は閻鞭と焔に声を掛けた。
「閻鞭、具現。焔、本来の姿に戻って良いですよ。」
『御意。』
四メートルほどの炎の鞭が現れて陽翔の横に赤い毛並みの巨大な狼が現れた。
鞭を振りピシッと地面を打つ。眼鏡を外し胸ポケットにしまった陽翔は整えている髪を無造作に崩しニヤリと笑った。
「焔、飛んでって真ん中から奇襲かけろ。俺は前から行く。しくじんなよー?」
『は。御武運をお祈り申し上げます。』
「ハハ!いちいち仰々しいよ、お前。じゃ、頼んだぜ、相棒。」
『お任せを。』
ガラリと雰囲気の変わった陽翔を見て戸惑う鷹翅と白兎。
焔と軽い口調で話していた姿。違和感はないが知らない人物みたいではある。
その間に焔が大群の真ん中に奇襲を掛け止まったのを見逃さず、陽翔が大群に駆け寄って行って鞭を振るう。
「炎・八煉地獄(ハチレンジゴク)。」
陽翔が呟けば八カ所から火柱が立ち上る。温度、熱量全てバラバラだが化け物には効いているようだ。
陽翔は左右、上下と様々な形で鞭を振るい化け物を倒していく。
一匹、また一匹と化け物の数は減り、あっという間に半数にまでなっている。
しかし陽翔の体力も磨り減り、だんだん技の精度が落ちてきていた。
一度体勢を立て直し一息ついた陽翔はゆっくりと荒い呼吸を整える。
いまだに焔は奮闘中で巨大ミミズを相手に大暴れしていた。
その姿に陽翔は微笑む。呼吸が落ち着き、前を見据えれば背後に気配。
反応が一瞬遅れた陽翔を巨大ミミズが襲おうとするがそれは叶わなかった…
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