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衝撃を予想しとっさに目を閉じていた陽翔は目の前にある小さな背中を見つめた。
茶髪のアッシュ。襟足から覗く項は白く否が応でもそそられる。
細い腕、小柄な身の丈、華奢な体つき。後ろ姿だけ見れば女と間違えそうだが…
陽翔には目の前の人物が男だろうなという確信があった。
「怪我はないですか?」
「ああ。わざわざ、どーも。」
振り返ったのは顔立ちも可愛らしいがやはり男。トンファーを構えていた。
陽翔も鞭を構えそのまま二人は真っ直ぐ正面に向かって走り出す。
擦れ違い、自分の正面に居る巨大ミミズを倒すことに専念することに。
陽翔の背後で走る雷撃がミミズたちを痺れさせては倒していく。
その様子を上から眺めていた鷹翅が白兎に問い掛ける。
『雷ではあるが、あの男も仲間と考えて良いのだろう?』
コクンと頷いた白兎はヨタヨタしながら陽翔が出て来たであろう屋根裏に入る窓へ向かった。
鷹翅もその後を追い、家の中に入っていく。
三階建ての一軒家。三階に二部屋、二階に四部屋、一階に二部屋とキッチンダイニング、リビング、風呂場がある。
それぞれを飛びながら確認していた鷹翅は広い廊下と階段に違和感を覚える。
しかし響いていた主の声が途切れたことに気づきそんな思考を彼方に追いやって慌てて一階に行った。
『姫ぇ!いかがなされた!』
「煩い。今ちょうど寝たとこだ。お前の声で起こすなよ。」
『なんと…この時間に御就寝など今までならば絶対にありえぬことだ。』
「ふーん。ホットミルク飲ませたらコトンといったけどな。」
慌てる鷹翅に冷静に返した駿は近くにあった部屋から毛布を持ってきてソファーで寝ている雅に掛けてやる。
その安らかな寝顔を見て鷹翅は呟く。時刻はまだ昼前なのだ。
普通に過ごしていたなら有り得ないことだという。
それにたいした興味もなく頷いた駿は珈琲を飲みながら言った。
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