第2章

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仮説を聞いた四人は驚く。まさか現王家のお抱え科学者が再び理を侵そうとするなんて… まっすぐ駿を見つめた景秦は腕を伸ばして烏の濡れ羽色のような漆黒の髪に触れようとした。 しかしスッとさりげなく身を引き手から逃れる。 それを見た景秦はクスリと笑い身の内に居る雅に話し掛けた。 (姫、この男は“紫の天“と呼ばれる一族の生き残りだ。信用しても大丈夫なのか?) (だいじょーぶっ!それに松駿は松駿だよ、景秦さん。) (楽天家だな…) 雅の明るい声での返答に小さく笑った景秦は視線を駿から身近に居る鷹翅に向けた。 『鷹翅とやら。君は姫の付き人だね?』 『はい。幼少の頃よりお仕えし、学舎に入られました頃に父君と母君の要望によりお側を離れ各地を転々としておりました。』 それを聞いた景秦は左手を前に出した。ポフンと可愛らしい音がして12センチほどの大きさになった雅が現れた。 驚く四人を見上げ柔らかい笑顔を浮かべた雅はペタンと座り込む。 景秦の外見も雅の外見からすっかり変わっていた。長い緑色の髪と瞳。中性的な顔立ちと体つき。 身に纏う神々しい雰囲気に彼が神だと分かる。 「けーしんさま、このなっちゃんって…」 『姫の精神体だよ。消えないようにちゃんと結界も張ってるから大丈夫さ。』 座り込みキョロキョロしている雅はまるで人形のようで可愛らしい。 立ち上がるとトコトコと懸命に歩いて陽翔と雪菜に近付く。 雪菜が手を差し出せば乗り込みチョコンと座り見上げる。 「篠ちゃん、陽ちゃん、一緒に戦ってくれる?」 「もちろんです、夏さん。」 「僕も同じですよ。」 前のめりになりながら問い掛けてくる雅に二人は笑顔で頷いた。 嬉しそうに笑った雅は雪菜の手から身を乗り出し気付いた雪菜と智輝が手を触れ合わせ智輝の手に移る。 智輝にも同じように問い掛け了承を得られれば嬉しそうに笑った。
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