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智輝の手から真っ直ぐ駿を見上げる雅。純粋そうな亜麻色の瞳に見据えられ思わず目をそらしてしまう。
やましいことなど一つもない。なのに真っ直ぐに見つめられれば全てを見透かされそうで怖くなってしまうのだ。
「松駿…お願い…きーてくれますか…?」
「なに?」
「俺と一緒に戦って下さい…」
顔を逸らしたままこちらを向かない駿に俯きながら声を掛ける雅。
短い問い掛けは思った以上に低くなってしまい横目に見えた小さな体がますます縮まる。
しまいには体操座りして膝に顔を埋めてしまっている。
智輝はそんなシュンとした雅の姿を見てキッと駿を睨み付ける。
「松駿、なっちゃんのこと傷つけんな。」
「はぁ?あのさ、智さん。俺は別に夏のことを傷付ける気なんかないぜ?」
「じゃあその態度はなんなんだよ。」
反論してみたが柔らかい雰囲気を消し強気な智輝に駿も怯んでしまう。
智輝は雅を手からそっと机に降ろした。そしてそっぽを向いている駿の胸倉を掴む。
思わぬ力業に駿は驚き智輝を見つめた。蒼の瞳が正面から睨みつけてくる。
「松駿。お前にそんな気はなくてもなっちゃんは傷つくんだよ。」
「な…!だから戦わねーとは言ってねぇ!」
「はいはい、落ち着く。智輝くんも松駿も落ち着いて。篠、なっちゃんは?」
「体に戻りました。青山さん、駿くん、喧嘩も良いですが夏さんのことを考えてあげて下さい。あの子、繊細な子のようなので…」
あわや殴り合いの喧嘩勃発かというくらいの険悪なムードが漂う。
ソレを見た陽翔が無理矢理に二人を引き剥がし向かい合うようにソファーに座らせる。
二人が落ち着いたのを見計らって雪菜に問い掛ければ冷静な声が返ってきた。
それに続く二人への忠告も怖いくらいに冷静な声で告げられた。
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