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早朝、眼鏡を掛けて執事服を身にまとい仕事をこなす青年。
彼の名前は紅月陽翔(コウヅキ ハルト)。焦げ茶色の髪と同色の瞳、冷たい雰囲気が特徴だ。
この屋敷の主であり、ここいら一帯の地主である男に仕えている。
陽翔は主が出掛け、寝室の掃除を任されているのを良いことに物色し始めた。
本棚、クローゼット、書斎、机…棚という棚は全て暴いていく。
「ありませんか…しょうがない、焔(ホムラ)。」
『御意、主。』
陽翔が足元に小さく声を掛ければ小さな炎が現れ、あっという間に子犬を形作る。
陽翔からの命に子犬にしては重厚感たっぷりの声が応え小さな頭が恭しく下がった。
焔と呼ばれた子犬は床を嗅ぎながら部屋中を歩き回る。
その後をゆっくりと陽翔が追う。手には地図。焔を追いながらも目は地図を見ている。
「このバツ印って隣町だよな…さっさと取り返して向かうか…」
はぁ…とため息をこぼしながらも方針を決め焔へと視線を向ける。
焔はある部屋の前にちょこんと座って陽翔を見上げていた。
小さく頷き声に出さず命を下し部屋に吸い込まれるように消えた焔を見送って踵を返す。
再び寝室に戻り綺麗に片付けてから部屋を出た。
そのまま仕事に戻りいつも通りにテキパキとこなしていく。
そして深夜、主だった男が戻らぬ間に荷物をまとめて屋敷を出る。
近くの森で待たせていた焔に跨がり目的の場所へ向かうために…
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