第2章

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連れてきた時とは違う可愛らしい笑顔に駿は安心していた。 頬を撫でる風が冷たくなり夕暮れが近いことを知る。 ぼんやり景色を眺めていれば叩かれているような感触に雅へと視線を向ければずっとペチペチと駿の手を叩いていた。 その必死な姿に首を傾げながら問い掛けた。 「夏、寒いのか?」 「松駿、やっと気付いたの!?そーだよ!もー寒いよ!早く中に入ろ!お腹も空いた!」 「ハイハイ…何食いたいわけ?」 「ベリットチキン!」 不思議そうに問いかけてくるため驚いたような声を上げながらも中に入りたいと訴える。ついでに空腹も。 おねだりに苦笑いを浮かべながら問い掛ければ食い気味に返事がくる。 ベリットチキンとは鶏肉に味付けし葉野菜を巻き小麦粉を纏わせて揚げたもの。 ちなみにこの料理、雅の大好物だったりする。 即答に苦笑いを深めながら頷き玄関を入り中に連れて入る。 ようやく戻った二人を陽翔と雪菜が出迎えた。智輝はリビングに居た。 二人の後ろから雅の姿形をした景秦が現れる。 手のひらの雅を景秦が差し出した手のひらへ移動させるとコートを脱いでリビングのソファーに投げキッチンへと向かった。 冷蔵庫に夕飯用の食材があるかどうか確認していく。 そこに雪菜が小走りでやってきて隣にちょこんとしゃがみ込んだ。 「篠?どうした?」 「“松駿、おれ魚食べたい。そしたら許す。“だそうです。青山さんから伝言。」 「ったく、しょうがねぇなぁ…許すも何もないと思うけど作るしかねぇか。篠、悪いけど手伝ってくれるか?」 「えぇ、良いですよ。」 智輝からの伝言を聞いた駿は苦笑いを浮かべ雪菜に問い掛けた。 それに頷いた雪菜は必要材料を取り出し調理を始めた。
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