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その頃、駿と離れて陽翔と景秦と共にリビングに戻った雅は自分の体を見上げる。
それに気付いた景秦は彼に体を返すことにした。
伝えるべきことは全て伝えた。あとはこの五人がかつての祖先のように世界の災悪を取り除いてくれることを望むだけ。
景秦は手のひらにいる雅を見つめ優しく話し掛けた。
『姫、長居して悪かったな。すぐ社へ戻るとしよう。中に戻りたまえ。』
「はぁい。景秦さんも気をつけてねぇ~」
笑顔で返した雅は手のひらから消えた。体内に戻ったようだ。
すると雅の手のひらに大人しくしていた白兎が擦り寄ってきた。
その耳の根元に緑のバンドのようなものが着いていた。景秦が兎へと乗り移った証拠のようなものだ。
白兎を森まで鷹翅に連れて行ってもらい陽翔と智輝の二人は雅が目覚めるのを待つ。
ピクリと睫毛が震えゆっくりと瞼が開く。何度かまばたきし亜麻色の瞳が見えた。
「なっちゃん、おはよー。」
「おはようございます。」
「おはよー、智ちゃん、陽ちゃん。」
緩慢に視線を走らせる雅に智輝と陽翔は優しく声を掛ける。
ソファーに座り直した雅は陽翔の方を向き笑みを浮かべながら言った。
「陽ちゃん、そんなに羊さん徹底しなくていいよっ!」
「えぇ!陽くん、羊さんだったの?」
「ちげーよっ!執事だよ、この天然共!」
「天然じゃないもん!」
雅の発言を訂正する前に智輝までトンチンカンなことを言う。
それに怒鳴るように返せば綺麗なユニゾンで否定の言葉が返ってきた。
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