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「どうしたの?」
「ちょっと……ちょっと出て来る」
「どこへ?」
チラリと窓の外を見る。――雨はまだ止まない。
「コ……コンビニ!そう、コンビニ。ちょっとコンビニまで」
冷静になれば、こんな如何にも口から出任せの、如何にも言い訳してます。というセリフ、彼女が騙されるわけは無いのだが。
彼女は信じる、と思った。彼女は、「ふぅん。いってらっしゃい」とちょっと素っ気なく言ってくれた。
その言葉を聞くや否や、オレは玄関に向かい、傘を持って飛び出した。
コンビニとは全く違う方向に足を向けて、オレは走った。
アイツ、まだいるかな。いや、首輪は無かったけれど、飼っている人が居て、探して連れ帰ったかな。
だけど、まだあのベンチに居たら……?
全速力で走るのは、いつ以来か。そんなことも考えず、ひたすら走った。
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