ベンチ

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 電車の中で、はぁっと小さくため息を吐いていたんだ。  窓の向こうの薄闇に、細い線が幾つか見えて。まさか……と思う間に、窓に水滴が線のように付き始めたから。  人の波に押されるように、最寄り駅のホームに立ち、流されるままに改札口へ向かう。  スイカを出して、改札を通り抜けて出口に向かえば、傘を差す人達が視界に入る。  オレは、もう一度空を見上げた。グレーの雲が空を覆って、一番星など見当たらない。  もちろん――線のように細い小雨が降り止みそうに無い。  ――仕方がない。  脇に抱えていた鞄を頭の上に置くという、昔から傘を持たないサラリーマンが取るスタイルで、オレは人の波をすり抜けながら、小走りにマンションを目指した。
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