10人が本棚に入れています
本棚に追加
電車の中で、はぁっと小さくため息を吐いていたんだ。
窓の向こうの薄闇に、細い線が幾つか見えて。まさか……と思う間に、窓に水滴が線のように付き始めたから。
人の波に押されるように、最寄り駅のホームに立ち、流されるままに改札口へ向かう。
スイカを出して、改札を通り抜けて出口に向かえば、傘を差す人達が視界に入る。
オレは、もう一度空を見上げた。グレーの雲が空を覆って、一番星など見当たらない。
もちろん――線のように細い小雨が降り止みそうに無い。
――仕方がない。
脇に抱えていた鞄を頭の上に置くという、昔から傘を持たないサラリーマンが取るスタイルで、オレは人の波をすり抜けながら、小走りにマンションを目指した。
最初のコメントを投稿しよう!