きべんのはじまり

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   1  テストが終わった放課後。葉桜中学の通学路には非運動部の生徒が帰路についている。皆、開放感に溢れていた。  二年生の椎木敬(しいきけい)もその例外ではなかった。  彼は今、一人で帰っていた。  彼には友人がいないわけではない。  ただ、交友関係は極端に狭かった。  そのせいも有り、一人で下校しているのだが、理由はそれが全てではなかった。  今日彼は、彼自身の数少ない友人と話をしたくなかった。  では、それは何故か。  理由はいたって普通であり簡単単純明快。  テストが上手くいかなかったのである。  椎木自身は成績優秀だ。どの教科もそつなくこなす。  だが彼には、苦手教科がある。  国語だ。  国語には登場人物の心境を読むという問題がたびたび出題される。  彼は、そういった問題が絶望的に苦手だった。
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