3人が本棚に入れています
本棚に追加
「うーん、他人がよりつかなそうな顔してるよね」
「……そうか」
「あ、でも本当に非人道的だなんて思ってないよ。椎木は親しい人にはとても優しいし、まっすぐだし」
「俺がまっすぐな性格してるか?」
「……してるよ、きっと」
「もういい。時間の無駄だ」
椎木は歩くスピードを速くして先に行くことにした。祈と話していると疲れるのだ。
「え!?まってよー」
祈は小走りで追いついてきた。椎木はちっ、と声に出して毒づいたものの、祈は笑って受け流していた。
それは彼らなりのいつも通りだった。
椎木と祈。彼らの関係は簡単に言えば腐れ縁。
彼らはつるむことのメリットを特に感じてはいない。むしろ椎木は祈を嫌っている節さえある。
だが、彼らは気付けばつるんでいるのだ。結局そこに行き着いてしまう。
それはまるで、物語の中にいる登場人物のようだった。
主人公と副主人公のように切っても切れない運命のような縁。
椎木はそれに疑問と不満と満足感を持っていた。
彼はこの生活を不本意ながらも詭弁ながらも嫌いだと言いながらも最高だと思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!