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「じゃあまた明日ねー!あ、もしかしたらメールするかもー!」
住宅街の十字路で、祈と別れた。ここからは一人だ。
ようやくうるさいのが消えた。と、椎木は呟いた。――無論、心底そう思っていたとは本人も思っていない――。
住宅街には人が通っておらず、静寂がそこにはあった。
とぼとぼと歩く中、椎木はこの静けさに身をゆだね、しばしばかりの、しかし十分すぎるほどの安心感とそして休息を得た。
そして、家から最寄りの公園に着き、見渡すと中に不良とおぼしき人間が談笑していた。
椎木の目は――一瞬だが――その中のとある少女にとまった。
……あれは、俺のクラスの奴か?多分そうだ。たしか、入学当時、祈と一緒にいた俺や薪宮に嫉妬からいちゃもんをつけてきた――。
と、そこまで考えた所で椎木は嫌な思い出だと切り捨てた。
確かにイヤミな奴だった。
できれば近づきたくも無い。
だが、そうは思ったが、気にしなければいい、とふらふらその中に入っていき、誰も使っていない遊具の中、ポツリと存在しているベンチにバックを置き、そして緩慢な動きで腰を下ろした。
緩やかな角度の背もたれを最大限に利用し、全体重を任せた。それは、彼が何かに座ったときの癖だった。
学校帰りにこの公園のベンチに座ることは今や椎木の習慣だ。
寝てしまうことも少なくない。が、たいした趣味嗜好を持たない彼にとってはどうでもいいことだった。
喉元すぎればなんとやら。人は嫌なことを忘れやすいという。嫌な日は寝て、次の日はリセットして次ぐトラブルに備えることが椎木の考えたストレス解消法だ。
ただでさえトラブル気質な自分が祈とつるめばどうなるか……。そういったこともあって、椎木がここで時折休んでいくのは当然のことかもしれない。
「ストレスか……初めてここでこうしたのは……いつだったかな?」
椎木は思い出すことにした。
たしか、この学校に通い始めたころか。
ちょうど、不良と談笑しているあの女子が――
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