きべんのはじまり

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   2  ……はっ、と椎木は目を覚ました。  気付くと、西日が輝いていた。雲は朱色に染まり、遊具の塗装は夕日とマッチして、椎木を切ない――あるいは不安とも言っていい――気持ちにさせた。  夕方まで寝ていたようだ。  公園の時計を見ると、六時五十分。ああ、約三時間だ。  もう帰らないといけない。待っている人はいないが、習慣というものは大事にしなければならないものだ。  立ち上がろうとすると、違和感があった。  右手が動かない。  椎木は不思議に思い、そちらを伺い見ると、  右手がベンチの手すりと縄でつながっていた。 「……は?」  そして椎木は驚くと共に瞬間で理解する。  これは、あいつの仕業だ、そして今も近くにいる、と。  ……はぁ……。  こういういたずらをされたとき、椎木には対処法がある。 「……薪宮!!出て来い!」  柄にも無く椎木は大声で叫んだ。  普通なら出て来いなどと言われて出て行くものはいない。 「はいはーい」  だが、その声にはバカ正直に反応する声があった。  お茶目と言えばそれまでだが……。
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