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……はっ、と椎木は目を覚ました。
気付くと、西日が輝いていた。雲は朱色に染まり、遊具の塗装は夕日とマッチして、椎木を切ない――あるいは不安とも言っていい――気持ちにさせた。
夕方まで寝ていたようだ。
公園の時計を見ると、六時五十分。ああ、約三時間だ。
もう帰らないといけない。待っている人はいないが、習慣というものは大事にしなければならないものだ。
立ち上がろうとすると、違和感があった。
右手が動かない。
椎木は不思議に思い、そちらを伺い見ると、
右手がベンチの手すりと縄でつながっていた。
「……は?」
そして椎木は驚くと共に瞬間で理解する。
これは、あいつの仕業だ、そして今も近くにいる、と。
……はぁ……。
こういういたずらをされたとき、椎木には対処法がある。
「……薪宮!!出て来い!」
柄にも無く椎木は大声で叫んだ。
普通なら出て来いなどと言われて出て行くものはいない。
「はいはーい」
だが、その声にはバカ正直に反応する声があった。
お茶目と言えばそれまでだが……。
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