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「どちら様でしょうか?」
「どちら様でしょうねえ?」
知らんがな。疑問に疑問で返さないで欲しい。
さて現在俺は、これまでの特に長くもない人生を振り返ってもちょっと身に覚えの無い、かなり緊迫した状況に見舞われている。
率直に言うと、俺の命は風前の灯なのです。
そんな俺が今いるのは、白を基調としたどこかの部屋。とにかく、全てが真っ白な部屋としか言い表しようが無い。白は白でも穢れ無き純白。
上も下も、前後左右と全てが白い。まるでそれ以外の配色を異物として認めないと、そう主張しているようにすら感じられる。
そうして次に目につくのが、装飾として置かれているらしい彫刻や絵画等の品の数々。これら一つ一つは、一体どのような由来を持つ品なのか。それは俺には分からない。生憎、骨董品は嗜まない。その手の造詣を俺は持っていない。
しかしだ、しかしである。これら全てを統合して、ただ一つだけ言えることがある。
人間離れしている。
少々意図が伝わり難いかも知れないが、要するに、ここにあるもの全てがとてつもなく神々しいのだ。現実感が感じられない。
立て掛けられた絵画、一見無造作に放置されているだけに映る彫刻。いいや、それだけではない、本来なら何の変哲もない壁ですら、まるで神の造り上げた傑作のようにしか俺には見えない。信仰を持たない筈の俺でもそう感じる。
更に、ただでさえ個として既に完成された領域にあるこれらの芸術が、この部屋全体にて絶妙なバランスで以ってマッチしている。
ここまで来るともはや、俺にはこれを何と表現して良いやら分からない。ただただ、凄いと溜め息を漏らすばかりである。こればかりは、例え誰であろうと同様であったに違いない。
ここは、神の住まう領域なのかも知れない。いや、比喩じゃなくかなり切実に。
さてでは改めて、正面に立つ人物に注視する。彼女に対して『人物』という表現が適切かは疑わしい所であるが、生憎それ以外の表現を俺は知らない。だからこの場では敢えてそう言わせて貰う。
正面に立つ女性は、一言で言えば美人。もう一言付け足すなら、人間離れした美人。言い換えるのであれば、芸術的美貌の持ち主。ここまで突出していると、逆に異性として意識出来ないのだと、誠にどうでも良い知識を学んだ次第だ。
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