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ここまで来ると、もはや一種の畏敬の念さえ覚える。
全身のバランス、黄金に輝く髪、背中から生えている純白の翼。これら全てが信じ難い程の黄金比によって、完全に一つの芸術品として大成している。彼女のその美貌は、神々しささえ放つこの部屋と比較してもなお、まるで見劣りしない。
さて、ここまでの流れで一つ、俺は大切な事を述べた。そう、彼女の背中には翼が生えているのだ。
まともな常識で考えるならコスプレの一種と断定するのが当然。単なる飾りだろう、と。だが、これが件の女性に限ってのみ言えば、逆に違和感が無いのである。我ながら不思議な話だと思うのだけど。
彼女を言い表すなら、そう。まるで『天使』。
そして同時に思うのだ。ここはどうやら『日本ではない。いや、そもそも地球ですらない』と。
何せ、気がついたらこんな神々しい部屋にいたのだ。
そこで、その迫力に圧倒されていた所で、俺以外誰もいなかった筈のその部屋から突如女性の声が響く。
『――そのお言葉、私としても大変嬉しく思います。さてそれはそれとして、改めて尋ねたいのですが。貴方は一体何者でしょう。人間だとお見受けしますが、どうやってここまで来たのですか?』
確か、この部屋に対して凄いとかそんな感じの感想を漏らした覚えはある。あくまで独り言で。件の天使的容姿の女性は、それを甚く喜んでいた。
彼女がいつどこから現れたかは知らないが、その容姿は部屋の神々しさと同様に現実離れしている。更に翼が生えてて、遠回しに自分を人外アピール。もうこの時点でお腹一杯でした。
まあ、それは良い。本来なら十分問題ではあるが、現在はそれ以上に緊迫した課題が目の前に存在するので捨て置く。なお、目の前に存在するというのは、これは比喩ではない。本当に眼前に突き付けられているのである。
「それ、どうにかなりません?」
「ええ。出来れば私もそうしたい所なのですが」
即答ですか。お願いだから、もう少し努力して欲しい。目の前の女性はこんな事を言っているけれど、その表情は真顔。台詞は本気ではなく、俺に対する威圧か何かだと思われる。
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