◇ソフィアと暴君竜

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 それから暫し。あれよあれよという間に外へ連れ出された私は、何故か現在、二人で街中の散策をしています。    私今、勤務中なんですけど……。    本来なら塞き止めるべき同僚達は、誰一人助けてくれませんでした。それどころか、揃って笑顔で見送る始末です。      相手を考えると、仕方ない気もしますが……。    多分、知らない間に魔王級に好意的に接する方向で話が纏まったんだと思います。私が少し仕事を抜けるだけで好印象を与えられるのなら、まあこれ位は当然容認するでしょうし。      そんな張本人こと魔王級──ミヤナギナギサさんは、街中のあれこれを見て回っている最中です。今は、何の変哲もない雑貨屋の、特に珍しくもない木彫り人形に興味津々のご様子。適当にあれこれ手に取って、如何にも物珍しそうに眺めています。    何を考えているんでしょう。    何も考えてないのでしょうか。    この人の考えていることだけは、正直よく分かりません。    ちなみに、件の木彫り人形はこの辺では結構作られていたりするんですが、特産品だとか、名物だとか、そういう訳ではありません。まあ、置物位にはなるでしょう。精々その程度です。     「ナギサさんナギサさん、ドラゴンがどうとか言ってたあれはどういう事ですか?」    意を決して、さっきから気になって仕方なかった所を問い質してみます。本当は知りたくないんですが、どうにも嫌な予感がするんですよ。    ギルドを後にした彼女はすぐさま町に繰り出し、現在この時まで何の説明も受けていません。何故彼女がこの町にいるのか、どうして私を連れ出したのか、ドラゴンとはどういうことか。それら全て。    当たり前のように私を連れ、予定調和の如く散策するだけの彼女の様子からは、偶然町に寄ったついでに、知人である私の元を訪ねてみて、せっかくなので観光でも始めてみたようにしか見えません。      ……。      意外と真に迫ってるかも。    他の人ならまだしも、彼女の場合、本当にそんな理由で動きかねない怖さがある。      やや後方より投げ掛けられた疑問に、彼女は手元の木彫り人形から目線を外し、一度私の方を振り替える。そこで少し首を傾げ、暫し空白の後、手をポンと叩いて語り始めるのでした。    ……ああ、今の今まで忘れてたんですね。    
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