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「それ、私が同行する意味あるのでしょうか?」
「え?」
至極もっともな疑問だと思う。
ところが、それを耳に入れた 側は同じようには思っていないらしく、きょとんとした表情をこちらに向けるのでした。
その呆けた顔はさながら、こう物語っているかのようです。何でそんなことを言い出すのか分からない、と。
……いやいやいや、そんなのこっちが言いたいんですが。
大山脈とは、ここから南方にて東西に渡って広がる、ここ北大陸と東大陸とを分断する境界線のようなものです。
その過酷さは正しく苛烈を極め、特に頂上付近のいわゆる雪原地帯などは、猛暑と豪雪に苛まされるという話からして出鱈目な地域だとか。そんな自然環境が起こり得るのでしょうか。
さておき、そんな雪原地帯にて棲息するタイラントドラゴンは、大山脈全体を通しても最強と称される魔物として知られています。
この国では討伐はおろか、まともに大山脈を探索出来る人材すらいないでしょうね。だって魔王級以前に、勇者級すら存在しないのですから。
意外と、認定されていないだけで、勇者級までならそれに近い実力者もいるかもしれませんけど……。
「ソフィーは行きたくないの?」
「い、行きたくないです!」
いざストレートに問われると逡巡してしまったけど、ちゃんと答えられました。
私は、ノーと言えるルミアナ人!
先程まで不思議そうな面持ちだった彼女は、私の答えを聞くや否や、一瞬呆気に取られた表情を浮かべ、それは次第に悲しそうなものへと変化して行きます。……何だろう、ちょっぴり庇護欲が。
……。
あ、あれ? 間違ったことは言ってない筈なのに、そんな顔を向けられると妙な罪悪感が。私、別に何も悪くないよね?
「ナ、ナギサさんを嫌ってるとかそんなんじゃなくて──そうだ! タイラントドラゴンが面白いって言うのはどういうことですか!?」
必死で、それはもう必死な思いで言い繕ったり話題を逸らしてみたり。それでもそんな甲斐があった為か、ひとまず彼女の表情から憂いが消えます。
上手く行って良かった、あの顔は私の精神衛生上良くない──!
「タイラントドラゴンはねえ……」
ここからは暫く、ナギサさんによる遭遇談へと移ります。やっぱりこの人、既に相対した過去を持っているようでした。
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