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個性。
この言葉は、自己を守る為の武器としても扱われるし、飾り立てる為の化粧としても使われる。
場合によって変わるという、なかなかにそれ自体が個性を持った言葉だ。
面白い。興味深い。
僕はこの言葉に対して何の感慨も浮かばないけれど、これから連想されるものには大きな関係はしている。
特色。
これもまた、個性と似ていて、また違うものだ。
使う場所も違うし、むしろ個性の意味を絞ったようにすら感じられる。
自分を飾り立てる条件を増やした事によって自らの首を締めるというのは、程良い美学と自信が必要ではなかろうか。
首を締めるようにラインを見せ、魅せる為には、自分の容姿を理解し自信を持たなくてはならない。
狂っていて美しい、まるでお伽話のヴァンパイアみたいだ。
別に僕はこういった詩的な事を考える趣味は無いのだけれど、これもまた場合によるというやつで。
考えざるを得ないというような、酔ったような心理状態にあるわけだ。
それでも、僕は何も含んでいやしない。
むしろ、出して欠かされた。
十数年という年月畜蔵された赤ワインを廊下にへばり付けて、僕は壁に背中を押し当てた。
驚く程に感触と温度が感じられない。
視界がぼやけて、横一線に切れたような錯覚すら覚える。
視界の中に映る前髪が揺れている事から、此処には風が吹いている事が分かった。
風はあまり好きではないけれど、この無駄な思考回転を止めさせてくれる殆ど唯一の動きだけに、今は憎めない。
嫌いな理由というのも、自転車をこぐ時に邪魔だとか、冬は腹立たしくなる程に鬱陶しいだとかくだらない理由でしかないし、別に今はどうだっていいだろう。
そんな事をぼんやりと考えて、浅く息を吐いた。
エメラルドは美しい。
僕の特徴である色を、美しいと言ってくれる人がいた。
もうそれは、僕に言ってくれそうにないけれど。
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