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その名前を聞いて、これ以上ない程に納得し、理解し、得心し、確信し、把握出来た。
その五文字の漢字が表すのは、これ以上ない程に明白なことだった。
それを知った僕は、無言でサムズアップする。
ニヤつきながら。
それを見た彼は、顔を綻ばせて僕を小突いた。
――それにしても、と僕は心の中だけで嘆息する。
確かに探してはいるものの、面倒くさい。
彼女がいる場所は見れば分かる。
だから、校内を回っていれば必然的に知ることが出来るのだ。
なんの苦労も、一切の思考錯誤すら要らない。
通常なら。
人が多い。
と、密かに毒付いた。
歩けど歩けど人混みばかり。
どこからポップしてやがる、と思わないでもないが、そんな思考はゴミ箱にポイしておこう。
スローアウェイというやつだ。
東棟の二階。
計十一学年を有するこの学園で、最もシケた連中の存在する場所だ。
飯の数だけ稼いだような連中を放り投げる、四年と五年の位置する棟。
勉学に励むわけでもなく、部活に精を出すわけでもなく。
いや、性な精ならあるいは、と期待に胸を膨らませてみたり、みたくなかったり。
兎も角、ここはつまらない場所であり、此処に彼女がいるとは考えにくい。
第一、今ここは『どうせ使ってないんだろーが』的な思考で倉庫が沢山作られた為、こんなに人がごった返しているのだ。
他の棟では、幾分どころか大分マシな筈である。
暇潰しに来るんじゃなかった、と僕が思い依頼者が嘆くような状態なのだから。
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