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人が身体に当たるにつれて、僕の気力が奪われていく。
普段なら取る側の僕が、今は奪われる側だ。
笑えない。
そんな事を考えながらげっそりとしている時、ふと知った顔を発見した。
偶々、少しだけ空いた空間に出た時にちらりと見えた。
沢山の頭に紛れて、キョロキョロと辺りを見回している。
飛び跳ねたりもして、何かを探してる風の彼女は、周りから浮いていた。
赤紫色の髪を揺らしながら辺りを伺っている様は、少々…ではなく多々異質だった。
ある理由で、校内で幅広くその名を広めているという事もあるが、それだけではない。
外の学校の生徒達も驚いたような目で見ている。
その理由は、考えるべくも無く分かった。
一つ、その姿が驚く程に可憐な少女だということだ。
肩にかかる程度に、バラバラに切られた赤紫色の髪は、白く綺麗な肌によく映えている。
そして、少々小さめの身長が母性本能を擽る。
ぴょんぴょん飛び跳ねているのもまた、それを増長させているだろう。
もう一つ、単純にその行動が目立つ。
何をしているんだおのれは、という視線がちらほらと見受けられる。
有り体に言えば、通行人の邪魔だ。
最後に、彼女の首回りのもの。
詳しく言えばマフラー。
尻尾みたいに蠢いているのだ。
白と紫の二色で彩られたそれが。
それらの要素を合わせて、凄く目立つ。
何を探しているのかは、分かるが。
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